昨今,コンピュータの破壊活動を行う,ウィルスやワームが多量に出回り,情報漏えいなどの被害をもたらしています.
ウィルスはサイトの感染や,メールに添付されたファイルの実行で感染しますが,ワームは自分で自分自身を増やす増殖活動を行います.
感染ルートは電子メール,P2Pファイル交換ネットワーク,メッセンジャー(ページャー),IRC(Internet Relay Chat)など多彩ですが,中でも電子メールによる感染が一般的です.
ワームは感染すると,感染したコンピュータのアドレス帳や,HDDにあるファイルから電子メールアドレスを抽出します.
抽出した電子メールアドレスに対し,自分自身を添付した電子メールを作成し,送信します.
昔は,コンピュータに設定された(主に)プロバイダのSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバの情報を参照し,そのSMTPサーバを使っていました.
しかし,最近はSMTPサーバにウィルスフィルターなどが設置されていることもあり,SMTPサーバを介さず,自分自身でSMTPサーバの機能を持ち,相手のホストに直接接続して電子メールを送るようになりました.
以前はspamメールの配信にはオープンリレーに設定されたSMTPサーバや,プロバイダのSMTPサーバを使っていましたが,最近のspam対策で,こうした手法ではなかなかspamメールが送れなくなってきました.
そこで,spam配信では自前でSMTPサーバを用意し,直接spamメールを送りつけるようになりました.
TCP/IPでは,一つのIPアドレスに対し,複数のアプリケーションが待ち受けられるよう,ポートという番号で識別します.
このうち,電子メールの伝送に使うSMTPでは,TCP25ポートを使います.
当然,ワームやspam配信でも,このTCP25ポートに接続することで,電子メールを送ります.
ワームやspam配信の増加に対する対策として,大手インターネット接続業者(プロバイダ)を中心にOutbound Port 25 Blockingという手段が使われるようになってきました.
これは,プロバイダ利用者のマシンから,他のホストのTCP25ポートに対する通信を遮断するというものです.
一般的にインターネットに接続しているだけであれば,他のホストのTCP25ポートに対して通信を行うことはあまり無いため,遮断してもほとんど問題ありません.
プロバイダから割り当てられる電子メールを使う場合は,普通はプロバイダの用意したSMTPサーバを使うため,電子メールの送信においても問題は起こりません.
しかし,この対策により一部で弊害が生じるユーザが出てきました.
ホスティングサービス(レンタルサーバ)を使っている場合,電子メールの送信にホスティング事業者のホストを使うことになります.
これは当然プロバイダから見れば他のホストなので,Outbound Port 25 Blockingを行っていれば通信は遮断され,一切電子メールは送れなくなります.
電子メールの送信は,ホスティング事業者のSMTPサーバを使わず,プロバイダのSMTPサーバを使うこともできるので,使用上問題はありません.
しかし,受信はホスティング事業者,送信はプロバイダという,異なる業者の設定の組み合わせとなるため,ユーザにとっては煩雑な設定を行う必要が出てきます.
また,設定方法の説明が難解なためか,ホスティング事業者,プロバイダとも設定情報などはあまり掲載していません.
完全なブロックは弊害が出るということで,TCP25ポートに対する通信に対し,通信帯域を制限する手法で対策を行うプロバイダも出てきました.
しかし,技術的に上位の通信レイヤーによる判断が必要なため,対策のためのコストが高くなり,また全体の通信速度の低下の懸念もあり,導入はあまり積極的とは言えません.
通常電子メールの送信に使うTCP25ポートの代替として,TCP587ポート(Submission)ポートでも電子メールの送信を可能にする事で,Outbound Port 25 Blockingに対応する事業者が出てきました.